Xanadu Identity Design

Identity & Communication Design, Design System, Graphic Design(PR)

Immersive Virtual Space for Music Live

Client: memex


アーティストでもあり同時に開発者でもあるmemexの手による、一年間の開発と運用期間を乗り越え、ついに完成した没入型のバーチャルライブ空間「Xanadu -Immersive Session Medium-」の正式オープンに伴うアイデンティティデザインを行った。
お客さん・アーティスト・空間とが、より相互に強固な関係性を築いていくため、新たなアイデンティティと独自のビジュアルコミュニケーションの手法を設計・デザインした。

現在、Virtualコンテンツが持つリテラシーの複雑さは以前にも増して難解さを極めており、従来PRに用いられてきたような短いメッセージで、必要な情報を十全に説明し切ることは困難な状況になってきている。
VRカルチャーについてどこまで説明すれば良いのか、アクセス性の良さや、コンテンツの見立ての多様性を許容する柔軟さをどのように伝えれば良いのか、説明すべき情報量に対して圧倒的に紙面が不足しており、伝達が難しい。
そこで、いま私たちが共有するVirtual世界の複雑かつ豊かな文脈(コンテクスト)についての多義的なメッセージを、その輻輳性(Multiplex)を維持したまま伝達するコミュニケーション表現手法を、新たに開発することによって解決を試みた。

具体的には、「Session Graph」と呼ぶビジュアルベースドな言語表現記法を設計し、PRやビジュアルイメージの共有に用いている。
伝えたいメッセージ(文章)を単語(ノード)に分解し、それぞれのノードが意味的に接続(Link)をして、空間(Medium)の中で接続(Session)を確立していく。
読み手が分岐を選択して読み進めることで、多解釈性を備えた文章形態という、通常の文章にはない機能を実装している。

これにより、時折、矛盾しているかのように見えるVirtual特有のコンテクストを含んだメッセージや観念を、同時に共存させることができる。 また、情報量を圧縮しているため、メッセージの分量に比べて、紙面が簡素な表現となり、読み進める遊び心も演出している。
さらにSession Graphが持つ表現手法自体の視覚的なユニークさを、そのままあらゆるシーンで共通して展開することにより、「機能するアイデンティティ」としての位置付けを確立することを目指している。

First Teaser

Second Teaser Flyer

Open Event Flyer

加えて、ブランクスペースを示す␣記号を、隠れたアイデンティティとして機能するように設計した。
これはアーティストとお客さんが場を共有し、共に空間を彩っていくという「Club Adaptation」から引き継いだコンセプトによるもので、まだ何も描かれていないまっさらな空間(Blank Space)を␣の記号を用いることで端的に暗喩している。
強さを持たない「弱いイメージ」をお客さんとアーティストとが無意識的に共有することで、真っ白なキャンバスとしてのライブ空間の位置付けを、相対的により強調することを意図している。

Xanadu Common Symbol