Client: Dentsu Inc.
Dev: atali,inc.
Link: Official Website (Only Report)
NTTドコモが毎年開催する最先端技術や研究成果等を紹介するイベント「docomo Open House’22」のVirtual空間のコンセプト企画・設計と、UXデザインの設計・ディレクション、および実装用の設計3Dモデル制作、キービジュアル制作を担当した。
「ともにやれば叶う。」というイベント全体のテーマと共に、オンライン展示と共通する「協創」のコンセプトを空間にも適用し、「出会いと出会いが生み出す領域の融合」を造形に落とし込むことで、やわらかな「出会いのための空間」を設計した。
ユーザの自発的な探索性や発見性と、迷うことのない動線計画を両立するため、ねずみ返しのような独特なサーキュレーションを全体のプランに採用している。これによりユーザは多数の行き先を直接意識することなく、迷子にならずスムースに展示を観覧でき、同時に展示企画者が推奨する順路をユーザへと暗黙的に提示することを両立している。
上下左右に自由に伸びていく連続的な移動空間を、自ら進み次のブースを発見していく体験を通じて、ユーザの自発性と参加性を高いレベルで演出することを目指している。
リアルで行われるビジネス展示のその多くは、会場や設えの物質的な制約により、矩形のオブジェクトや規格化された空間によって構築されており、それらは造形的にも空間体験としてもあらゆる余地のない「堅さ」を持つものになっている。
しかし本来、人の持つ単位空間(Personal Space)は腕を全方位に伸ばした範囲の歪んだドーム状であるから、展示空間と人間とのあいだに齟齬が生まれ、摩擦が起き、緊張感が漂い、自然な空間体験とは言いがたい。
そのため、本展示空間においては、各個人(来場者, ビジネスへの参加者)が持つ各々の固有空間と、人と人とが出会い生み出される新しい関係性の領域、そして展示内容が持つアイディアや発想とのビジネス的な出会いによって生まれる大きな空間、それら3つのスケールの仮想的な空間に実体を与え、構成要素として用い、構造(Architecture)化することにより、ボトムアップに会場全体の空間を構築している。
加えて、丸みを帯びた造形の一貫したデザインコードを、会場内に存在する各オブジェクトへと厳密に統一して適用することで、より記憶に残る場の印象(ムード)を持ち帰っていただくことも意図している。
「そういえば、あの場所でああいう展示を見たな」とふとした瞬間に想起できるような、固有性の高い場の記憶として刻まれていれば幸いである。
各動線経路はチューブ状の造形をもつ。これはPersonal SpaceのVolumeを移動に応じて連続的に足し合わせたものとなっている。ユーザは空間に包まれたような感覚を得ると同時に、自ら空間を掘り進めていくかのように自発性を感じながら次のブースへと移動していく。
探索、発見、鑑賞、移動のサイクルを繰り返すことで、展示イベント全体の体験のリズムを構築し、飽きることなく最後まで周れるよう工夫を施している。
また、中央のエントランスからは全方位へと複数の経路が枝分かれしており、各ブースエリアへと直接アクセスできるショートカットを提供している。
これにより、中断した際にも、途中経路への復帰を容易にしている。
合計9つのブースエリアによる全体の構成は、ゆるやかに複数の領域に分かれてはいるが、ユーザがマップを意識する必要はなく、しかし自分の居場所は常にわかり続けるという、ユーザにとって最も認知負荷の低いストレスのない状態で展示を閲覧できるという体験の設計となっている。
全体を通して、ユーザにはスムースな展示体験となるようUXフローを構築しつつも、同時に強い印象を残す自発性を感じられるような能動的な体験を行えるよう設計を施した、Virtual特有の展示空間となっている。